4つのテスト | THE 4-WAY TEST |
言行はこれに照らしてから 1.真実かどうか 2.みんなに公平か 3.好意と友情を深めるか 4.みんなのためになるかどうか |
Of the things we think, say or do 1. Is it the TRUTH ? 2. Is it FAIR to all concerned ? 3. Will it build GOOD WILL and BETTER FRIEANDSHIPS ? 4. Will it be BENEFICIAL to all concerned ? |
創案は七つのテスト
社の倫理訓について構想をめぐらせたハーブは最初、およそ100語からなる文章をしたためましたが、これは長すぎると判断しました。そこでさらに推敲(すいこう)を重ね、それを7つの項目にまとめたのです。四つのテストは当初は、七つのテストだったのです。しかし、これでも長いと考えた彼は、それを自問形式の4項目にまとめ上げ、それが今日の四つのテストとなりました。
広告に適用した四つのテスト
このようにして、「言行はこれに照らしてから」の四つのテストが誕生したのです。
真実か
どうかみんなに公平か
好意と友情を深めるか
みんなのためになるかどうか
簡潔さの中に深い意味を包含するこのテストは、事の大小にかかわらず、クラブ・アルミニウム社が諸事決定を下す際の基本となったのです。しかし、テストというものはどんなものであれ、実際に検証される必要があります。実社会でうまくいくだろうか? 事業家がその指針に従って仕事をこなしていけるだろうか? ある弁護士はハーブにこう言いました。「もし私がこのテストを厳密に実行したら、私は飢え死にするでしょう。ビジネスに関して言えば、四つのテストは絶対に実行不可能です」。
この弁護士の懸念も、わからないではありません。他者の利益を立脚点とした上で、真理を実践し、行動評価を行うよう求める倫理システムは、どんなものであれ、大きな負担を伴います。そのようなテストは、誠実さと野望のバランスを取るのに腐心している人たちに、苦痛に満ちた葛藤(かっとう)を与えることにもなります。一つの生活様式として、それを現実的に実行できるかどうかをめぐって、世界中で熱い議論が戦われてきました。懐疑深く、消極的な考え方しかできない人たちはさておき、ロータリアンの中にも、四つのテストは極度に単純化された哲学であって、その有用性は疑わしく、相矛盾する趣旨からなっており、目標は非現実的である、と真剣に考えている人たちが常に存在します。社の倫理訓について構想をめぐらせたハーブは最初、およそ100語からなる文章をしたためましたが、これは長すぎると判断しました。そこでさらに推敲(すいこう)を重ね、それを7つの項目にまとめたのです。四つのテストは当初は、七つのテストだったのです。しかし、これでも長いと考えた彼は、それを自問形式の4項目にまとめ上げ、それが今日の四つのテストとなりました。
このテストは、自らの動機と目標を思慮深く検討するよう求めるものです。真実、公平さ、思いやりに対する強調は、道徳的要素を多く含有しているため、“倫理的消化不良”を起こしてしまう人たちも確かにいます。しかし、1930年代のクラブ・アルミニウム社においては、あらゆることが、四つのテストに照らして判断されたのです。まず広告に対してそれは適用されました。「より良い」とか「最上の」とか、あるいは「最高の」や「最高級の」といった表現が広告から削られ、製品に関する事実に基づいた説明文が載せられることになりました。競合他社の欠点を論ずる文面も、広告や企業案内から取り除かれたのです。
難局に挑んだ四つのテスト
ある日のこと、販売部長が、調理器具5万点の注文が取れるかもしれないと発表しました。売り上げは低迷状態にあり、会社は依然として倒産の危機から脱していませんでした。最高幹部の人たちは、明らかにこの販売の機会を逃すことなく、商談が成立することを望んでいました。しかし、一つの問題点がありました。販売部長が聞いたところでは、注文主である業者は商品を値引きして販売したいというのです。「これでは、これまでわが社の製品を地道に宣伝し販促してきてくれたディーラーに対して不公平となります」というのが販売部長の意見でした。結局、この注文は断ることになりました。その年には、ほかにいくつか厳しい決断が下されましたが、これは、その中でも最も苦渋に満ちた決断の一つでした。この取引を行っていれば、疑う余地もなく、同社が営業活動のよりどころとする四つのテストを嘲笑(ちょうしょう)することになったでしょう。
1937年までに、同社の負債は完済され、その後の15年間では、株主に対して100万ドル以上もの配当が支払われました。また、同社の純資産は200万ドル以上に達しました。
いかがですか? これでも、あまりに理想的すぎて実社会には向かない、とお考えですか? 四つのテストは、ビジネスという厳しく、変転きわまりない世界で生まれ、経済界が経験した最も過酷な時代の中で、厳密な試験を経てきたのです。それは、実業界という競争の場で生き残ってきたものなのです。
1942年、当時の国際ロータリー(RI)理事のシカゴのリチャード・ベナー氏が、ロータリーもこのテストを取り入れるべきだとの提案をしました。RI理事会は、1943年1月にベナー氏の提案を承認し、四つのテストを職業奉仕プログラムの一つの構成要素としました。もっとも、このテストは、今日では四大奉仕部門のすべてにおける不可欠の要素として認識されています。
ハーブは、ロータリーの創立50周年記念にあたる1954-55年度、RI会長に就いた時、四つのテストの著作権をRIに移譲しています。
真実かどうか―真実は不変であり、時代を超越するものです。真実は正義なくしては存在し得ません。
みんなに公平か―顔を突き合わせてとは言わないまでも、腕を伸ばせば届くような所で、激しくやり合うビジネス手法に代わり公平さを取り入れたビジネスは、お互いの関係を傷つけるよりも、その関係向上に役立ってきました。
好意と友情を深めるか―人は生まれながらにして、他者と協力して生きていく存在であり愛情を示すことは生来備わっている本能です。
みんなのためになるかどうか―この項目は、食うか食われるかを原則とする無慈悲な競争を排除するものであり、それに代わって建設的で創造的な競争を導入するものです。
四つのテストは国家という枠を超えたものであり、国境や言葉の障壁を超越するものです。そこには、政治や独断や特定の信条は介在しません。一つの倫理規範としての存在以上である四つのテストは、いかなる形であれ、人生を成功に導くための要素を含み持っています。それは今日の社会でも有効性を保持し、かつ実効性のあるものなのです。
最終的なテストは、実際に行動することにあります。著名な心理学者であるウィリアム・ジェームズ(1842~1910年)は、「真実が意味するところの究極的なテストは、それが指示あるいは示唆する行動である」と、言っています。今日のロータリーの中核には、倫理的卓越性を使命とする四つのテストが存在します。人類は、共に繁栄することができるのです。現代のビジネスは、誠実かつ信頼のおけるものであり得るのです。人々は、お互いを信じ合うようになれるものなのです。
1977年のサンフランシスコ国際大会で、米国の取引改善協会(不正広告の排除など商道徳の改善を目指す実業家・生産者の団体)のジェームズS.フィッシュ氏は、次のように語っています。「競争を原理とする企業経営システムが存続するためには、厳格な倫理規範という枠組みが必要です。実際のところ、資本主義制度の全体構造そのものが、信頼というものに大きく依存しています。つまり、ビジネスに携わるすべての人たちは、お互い同士だけでなく、大衆や消費者や株主や従業員とも、公平かつ誠実に対応するという信頼関係に依存しているのです」。
現代社会が今いちばん必要としているものは倫理的誠実さであると言ってもいいでしょう。四つのテストは、人々が価値ある目標を追い求める際の指針として活用できます。その目標とは、友人を探し選び、その友人関係を維持すること、周りの人たちと友好関係を築くこと、幸福な家庭生活をつくりあげること、高い倫理的・道徳的基準を設定し身につけること、自ら選択した事業や専門職で成功を収めること、より良き市民となり、次の世代にとっての良き手本となること、といったことです。
簡潔さの中に多くが語られ、感動的なまでに力強く、実のある成果を必ずもたらすこの四つのテストは、緊張と混乱と不確実性に満ちたこの世界のただ中に、清新で明るさにあふれた未来展望を与えてくれるのです。
引用文献 | 『THE ROTARIAN』 1999年10月号 |
『ロータリーの友』 2000年1月号掲載 | |
『ロータリーの友』 2003年10月号再掲載 |